根暗な人が10-FEETに出会った話。
初めて10-FEETのライブをちゃんと見たのは
2013年のロッキンだった。
その時TAKUMAはMCで痴漢について話してた。
痴漢された人はそのあと一生、ずっとナイフ突き付けられてるような気持ちで生きていくことになる、みたいな話だったと思う。
このMCはそのあとのライブでも何度か聞くことになった。
正直に言うとTAKUMAの、というか関西人特有のうまいこと例えを出してこようとする感じ、
泣かせようとしてくる感じが苦手だった。
その頃はFireBallと仲が良いくらいの情報しか私は持ってなくて(中学の頃はジャパニーズレゲエ大好きだった)カラフルないわゆるディッキ族が集まるバンドというイメージで、あまり良くなかった。これもただの聞かず嫌いの偏見だった。
細美武士が歌うような卑屈な曲の方が私には合ってると思ってたし、桜とか歌ってるし、なにより10-FEETファンはみんなガタイがよくて、怖かった。笑
でもその年、シガードッグという曲の間奏でTAKUMAが言った。「勘違いすんなよ、笑った時顔がひきつるのは優しいからやで。」
ここまで書いた内容で十分お察しだとは思うけど、私はとても根暗。笑
今でこそライブ友達ができたり、職業柄人と話すことが多いので初対面の相手とも普通に話せるようになれた(慣れた)けど、どうも昔からみんなの輪に入るのが苦手だった。ノリってものがよく分からなくて、良くも悪くも真面目に受け止めすぎる癖があった。
そのせいで無駄に考え込んで、自己嫌悪に陥ったかと思えば勝手に自己完結させてみたり、要はクソめんどくさい奴だった。
その年は前年のCDJで知り合った1つ下の女の子と行った。
その子はいつでもにこにこしていてとても愛嬌のある可愛い子だった。はじめは純粋にいい子だなと思ってた。でも、前述した通り私はとても根暗で、そしてひねくれている。それが次第にコンプレックスに変わるのも昔からの癖だった。
なんで私はこの子のようにうまくやれないんだろう。なんでみんなは私より軽く、物事の流れに乗れるんだろう。
そんな負の感情を持ったまま10-FEETのライブが始まって、モッシュとかサークルとか始まって、おそらく知らない人同士が肩とか組んでて、(ああ、ここは私の居場所じゃないな)そんな気分だった。
でも、シガードッグの間奏でTAKUMAが言ったその言葉は、まるで自分に言われてるように感じて、気づいたら涙が止まらなくなっていて、気づいたら靴脱いでた。
それは今も語り継がれる伝説の靴ダイブが発生した年だった。笑
それから少しずつ10-FEETのCDをTSUTAYAで借りてiPodに入れて、毎日聴くようになって、風と2%が大好きになった。
でも相変わらずチキンな私はワンマンに飛び込む勇気はなくて、フェスで見れたらいいかなくらいの気持ちのまま、気づいたら3年が経って、新曲はアンテナラスト。
始まった瞬間TAKUMAの声だけが耳に入ってくる。「言葉足らずのあなたの言葉 たくさんの思いがありました」
私の好きなレゲエ調の曲に乗せて続いていく。
一発でめちゃくちゃハマった。
なんて優しいんだろう。
どうして分かるんだろう。
言葉を大切にするがあまり、言わなくていいことまで伝えようとしてしまって、逆に伝わらなくなる。そんな空回りややりきれなさ、もどかしさを、この人だって感じてたんだ。
10-FEETのライブはチケットが取りづらい。
20年の歴史を経て日本中で多くの人に愛されるバンドは、もちろん曲やライブのかっこよさもあるけど、それ以上にこの人間臭さにあったんだって、めちゃくちゃ遅くなったけどその時やっとやっと分かった。
以降、悩んだ時、つまらないことで考え込んでしまう時、誰かとのやり取りで自分の中で勝手につまづいてしまったと感じた時、TAKUMAの言葉が浮かぶようになる。
今では知らない人と手を差し出し合って肩組んでたりする。それもめちゃくちゃ笑顔で。
昔じゃ考えられなかった。
ライブ終わったあとって、全身バッキバキなのはもちろんなんだけど顔が痛いことに気づくんだよね。
それほどずっと笑ってるってことなんだよな。
京都大作戦の試写会の感想コメントで、みんな言ってた「人生変わるバンド」、あれは本当にそうだ。